4月に入ってからも国税庁から新たなリーフレットが公開され、特設サイトの内容も充実しております。
一方その内容・制度はとても複雑な要素が多いのが実情です。
今回は納税者の皆様にインボイス登録の判断の面で、少しでも役立てるよう記載させていただきました。
インボイスという言葉がよく聞かれるようになりましたが、適格請求書発行事業者登録(以下インボイス登録。事業者番号をインボイス番号とします)という制度の理解に苦労しています。。まず、登録したらどのような事が起きるのでしょうか。
インボイス登録の申請を行う(税務署、若しくはe-tax。税理士関与がある場合は税理士が納税者様に意思確認のうえ代理で申請する事がほとんどです)と、シンプルに①事業者ごとにインボイス番号が発行され通知されます。電子希望であれば電子で通知され、そちらの方が到達が早いようです。②消費税の申告納税義務(計算して申告・納税)が発生します。インボイス登録による場合、最速で令和5年10月1日以降の取引が消費税計算の対象となってくる形です。
②ですが私達は普段の生活ではお店に消費税を含めた代金をお支払いするだけですので、消費税の計算方法自体がよくわかりません。また申告や納税についてはどういった時期なのかもよく把握できていませんね…。
まず最終的な申告・納税時期は所得税の確定申告、法人税の確定申告と同じような時期と考えてください。所得税であれば翌年3月末までに、法人税であれば決算日後2ヶ月以内です。計算の期間も基本的には所得税や法人税と同じです。そして消費税の計算についての原則的な方法は、期間の売上に含められた消費税をそのまま納付する…わけでは無く、期間に支払った金額に含められた支払消費税が、売上に含められた消費税から控除できます。その計算の結果額を納税する形となります。なお、イメージとして2年前(法人は2期前)の売上高によっては、もっと簡単で売上から控除額を決定する方式【簡易課税】も使えますし、制度開始に伴う【激変緩和措置】という前述の簡易課税のような計算方法もあるのですが、まずは原則的な計算方法を頭に認識していただいた方が良いと思われます。
気になったのですが。インボイス番号は電子申請・電子希望の場合は元々2週間で到達と聞いておりました。先日のお客様の場合は2ヶ月ほど到達に時間がかかっていたようです。インボイス登録は令和5年10月1日からでも、インボイス番号が到達していない場合はデメリットはありますでしょうか。
消費税の計算において、制度開始前は消費税課税取引であれば【誰に】支払っても控除の対象となりえますが、令和5年10月1日以降はインボイス登録を受けた方への支払いでなければ控除できません。ここがインボイス登録を【しなくてはならない】と感じさせる大きな点です。そして、インボイス番号等を請求書等に記載することで、この控除の効力が生じるところですので、インボイス番号到達前は記載できません。例えば売上先にインボイス番号記載請求書等を交付できないと、売上先では消費税計算で支払消費税が控除ができません(当面は措置により部分的に控除は可能です)。万が一売上先がそのまま申告を迎えてしまいますと計算では控除できないだけはでなく、その後に計算期間内にインボイス登録となっていたインボイス番号の提示を受けた場合、【更正の請求】といった申告のやり直しの必要性が生じます。
それは大変なことですね。更生の請求は通常の申告と違って馴染みが無いので、ちょっと抵抗感があります。ところで業種によっては、そもそもインボイス登録の必要性が薄かったりしますでしょうか。
売上先が消費税の申告納税と無縁である【消費者さんがほとんどである場合】はインボイス登録の必要性は薄いですよね。あとは【事業経費性の乏しい売上中心】である業種さんです。個人学習塾などのお子さんの習い事、町の駄菓子屋さんや理容店さんなどは登録必要性が薄いところです。
なるほど…。こうやって見直しますと制度がはじまった後は、消費税の控除が出来る業者さんとしか、取引をしたくない気分になりそうですよね…。他の法律での制限などもあるとは思いますが…。
中小企業の現実ですと見えない部分で上下の関係により、インボイス登録に追いやられる…インボイス登録の変わりに不利益な価格交渉になりそうな点は確かに不安です。ただ、消費税の世界の話ですので、【消費税の控除が出来なくても、この人にお支払いをして、購入したいorサービスを受けたい】といったスペシャリストであれば、インボイス登録は必須ではありません。インボイス登録は任意ですしね。
個々の取引でも色々考えさせられそうです。会計処理でも支払先はインボイス登録なされているか、取引はインボイス番号不要とされる取引では無いかどうか、確認事項が多くなりますね。ありがとうございました。
※当記事はフジハラ税理士社労士事務所判断での記載です。ご判断は税理士等にご確認のうえ実行ください。